プロジェクト管理コラム - ステークホルダー管理編(3) ステークホルダーを説得する
本コラムではプロジェクトマネージャやPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)向けに、プロジェクトを成功させるためのポイントを解説していきます。ステークホルダー管理編では、ステークホルダー管理とはどんなことをするのか、ステークホルダー管理を行うことでプロジェクトを円滑に進め、成功に導く方法などを説明します。第3回(最終回)はステークホルダーにプロジェクト状況を報告するときや、計画変更を余儀なくされてステークホルダーの了承を得る場合など、ステークホルダーの理解を得るための行動について理解しましょう。
4. ステークホルダーを説得するために
プロジェクトマネージャは定期的にステークホルダーとコミュニケーションを取り、プロジェクトを円滑に進めていく必要があります。
この際、前記のような方法で、ある程度良好な関係を構築することは必要です。
しかしながら「仲がいいから何でもよい」という訳にもいきません。プロジェクトマネージャはプロジェクトの責任者として的確に、かつ分かりやすくステークホルダーへ報告、説得する必要があります。
報告の際に重要なことを以下にあげてみましょう。
4-1. 報告資料等には「客観的なデータ」による事実が大事
時にはプロジェクトマネージャはネガティブな報告をしなければなりません。その際に「事実」と「原因」をきちんと報告する必要があります。特に事実の部分についてはそれまでに推進してきたプロジェクトの内容を客観的なデータを用いて説明することが必要です。以下のようなものが代表的な例として挙げられます。
- スケジュールが遅延する:どこのプロセスで遅延が生じ、想定よりどの程度遅延するのか
- コストが追加になる場合:なぜコスト増が生じ、追加で必要になるのか
- 当初想定していた要件を変更せざるを得ない場合:要件が実現できない理由は何か
報告にはこのように事実と原因を記載する必要がありますが、これらの事実を主観で書いてしまうと信頼性が揺らぎます。
(元々ネガティブな報告なのにも関わらず、さらに主観で書かれた報告書は信頼に値しません)
そのため、客観的なデータに基づく事実を主観を加えずに報告する必要があります。ウソやごまかしの効かない客観性のあるデータでプロジェクト状況をインプットし続けることでステークホルダーからの信用を得ることにつながるでしょう。
もちろん、原因がプロジェクトチームにあるのであれば、きちんとステークホルダーへの謝罪等しなければなりません。そのような場合でも、日ごろの正確な状況報告を通じてステークホルダーとの信頼関係が確立されていれば何らかの協力を得られることが多いものです。ステークホルダーにとっても、プロジェクトを成功させることは最優先なのですから。
4-2. 客観的なデータを元にNEXT Action planを設定
事実をデータに基づき報告するだけではステークホルダーは満足しません。
「納期が遅れます」という報告に対して、自分がもしステークホルダーだった場合は何を求めるのかを考えてみるといいでしょう。
★ここで重要なのはそのステークホルダーがどのような人物(立場、人柄、考え方など)なのか、という点は事前に分析し終わっていることです。
ある人は「何が何でも納期に間に合わせろ!」と言うかもしれませんし、「よりよいものができるのであればある程度の遅延は許容する」という判断をする人もいるかもしれません。
(契約で遅延損害金等が定められている場合、他のプロジェクトやビジネスに及ぼす影響など、プロジェクトマネージャは別の観点でも考慮する必要があります)
そこでプロジェクトマネージャは次にこれをリカバリーするために、あるいは成果を最大(理想は100%)にするためにプロジェクトチームがどのようなアクションを取るかを先回りして検討し、合わせて報告することが大切です。
例えば、ステークホルダーにとって「納期も品質も譲れない」ということが分かっているのであれば、「分割リリースにして優先機能の納期を間に合わせる」というようなプランを提示することで理解を得られる場合もあるでしょう。(もちろんそれに伴うコスト増に対しての根回しなども必要となります)
4-3. データを用いた説得
今後のアクションプランを提示するにあたり、想定のデータが準備出来ているとより説得力があるでしょう。過去のリアルのデータと未来の想定データを合わせてステークホルダーが理解できるフォーマットで提示することで納得してもらえる可能性は飛躍的に高まります。
可能な限り図やグラフ等で視覚化するのでベストです。これらのデータを日常的に蓄積し、手軽に抽出&視覚化できるようなツールがあれば、プロジェクトマネージャにとっては助かるでしょう。(プロジェクトがトラブルに見舞われているときは大抵プロジェクトマネージャはてんてこ舞いですから)
5. おわりに
これまでプロジェクトマネージャがステークホルダーとどのように接していくべきかを解説してきました。
プロジェクトマネージャは現場の人間のマネージメントのみならず、ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを進める役目もあります。
まさにスーパーマンでなければならないようにも感じますが、最適なツールを用いて負荷を軽減しつつ、プロジェクト成功に向かって邁進することがプロジェクトマネージャには大切ではないかと考えています。
以上で「ステークホルダー管理編」はおしまいです。
次回をお楽しみに。
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