商品基礎情報
製品概要
GRAS 40PO-Hは、現代の音響デバイス生産ラインにおける厳格な品質管理テストの要求に応えるべく、最先端技術を結集して開発された1/4インチ高周波圧力マイクロホンです。 本製品は、可聴域を超える40kHzまでの広範な周波数帯域において、極めて精密な音響測定を可能にします。特に、スピーカー、ヘッドホン、マイクロホンといった最終製品の音響特性検査において頻繁に遭遇する、高い音圧レベル(高SPL)環境下での安定した性能発揮に最適化されています。GRAS 40PO-Hの核心を成すのは、画期的なEQset™(Equalization Set)テクノロジーです。 この技術は、マイクロホン内部に搭載された専用DSP(デジタル信号処理)モジュールが、個々のマイクロホンカプセル固有の感度ばらつきを補正し、規定値 (8 mV/Pa @ 250 Hz) に厳密に固定すると同時に、周波数応答を全測定帯域にわたってフラット(平坦)になるようリアルタイムで補正します。これにより、従来の生産ライン用マイクロホンでは避けられなかった個体差に起因する測定誤差や、煩雑な個体管理、環境変動への対応といった課題を根本から解決します。結果として、GRAS 40PO-Hは卓越した測定精度、優れた再現性、そして生産ラインにおけるテストセットアップの大幅な効率化を実現し、品質管理プロセスの向上に貢献します。
革新的EQset™テクノロジーについて
EQset™は、生産ラインにおける音響測定の精度と効率を飛躍的に向上させるGRAS独自技術です。その中核は、マイクロホンプリアンプ部に組み込まれた高性能DSPモジュールにあります。
- 感度と周波数応答のデジタル補正: 各マイクロホンカプセルには、製造工程上、わずかながら感度や周波数応答の個体差が存在します。EQset™テクノロジーでは、製造段階で個々のマイクロホンの特性を精密に測定し、そのデータを基にDSPが最適な補正を行います。 これにより、全ての40PO-Hマイクロホンは、250Hzにおいて公称感度8mV/Paに対し±0.2dBという極めて狭い許容誤差内に調整され、出荷されます。同時に、周波数応答も10Hzから25kHzの範囲で±0.5dB、10Hzから40kHzの範囲で±1dB以内という、非常にフラットな特性に補正されます。 この補正はリアルタイムで行われるため、使用中の特性変化も最小限に抑えられます。
- 個体差の排除と互換性の確保: EQset™による厳密な特性管理の結果、全ての40PO-Hマイクロホンは「電気的・音響的にほぼ同一」とみなすことができます。これにより、測定システム構築時に個別の感度入力や周波数補正ファイル(データシート)の適用が不要となり、セットアップ時間を大幅に短縮できます。また、マイクロホンの交換が必要になった場合でも、特別な調整や再校正を行うことなく、別の40PO-Hマイクロホンを接続するだけで、一貫した測定結果を得ることが可能です。これは、多数のテストステーションを持つ大規模生産ラインにおいて、メンテナンス効率とシステム稼働率の向上に大きく貢献します。
- 測定不確かさの低減と信頼性向上: マイクロホン間の特性ばらつきは、測定結果の不確かさを増大させる主要因の一つです。EQset™は個体差を最小限に抑えることで、測定システム全体の不確かさを低減します。これにより、製品の合否判定における誤判定(False Pass/Fail)のリスクを大幅に削減し、より信頼性の高い品質管理プロセスを実現します。
- 位相整合性の向上: EQset™は感度と周波数応答だけでなく、位相特性のばらつきも抑制します。仕様に示される通り、周波数帯域全体で位相差が厳格に管理されており(例: 20kHzで±5°、40kHzで±11°)、マイクロホンアレイを用いた音源探査やビームフォーミング、インパルス応答測定など、位相情報が重要となるアプリケーションにおいても、より正確な結果を得ることが可能です。
卓越した環境安定性
生産ラインは、温度、湿度、気圧といった環境条件が変動しやすい場所です。従来のマイクロホンでは、これらの環境変化が感度変動を引き起こし、測定精度に影響を与える可能性がありました。GRAS 40PO-Hは、独自の堅牢な設計とEQset™テクノロジーの補完効果により、優れた環境安定性を実現しています。一般的な生産ライン環境(温度13~35℃、静圧983~1043hPa、結露しない湿度)において、環境変動に起因する感度偏差は±0.1dB未満に抑えられます。これは、マイクロホン自体の機械的・電気的な安定性に加え、EQset™の補正機能が微細な環境影響を補償する結果です。このため、日常的な環境変化に対する補正作業が不要となり、連続的で安定した測定運用が可能になります。
主なアプリケーションと技術的活用
GRAS 40PO-Hの優れた高周波特性、高SPL対応能力、そしてEQset™による高精度・高効率性は、以下のような先進的な生産ラインテストや測定アプリケーションに最適です。
広帯域オーディオデバイスの生産ラインテスト
- 対象: ハイレゾ対応スピーカー、高性能ヘッドホン、MEMSスピーカー、広帯域マイクロホンなど。
- 術的活用: 40kHzまでのフラットな周波数応答と低歪み特性により、可聴域を超える高調波歪み測定、過渡応答(インパルス応答)評価、異音(Rub & Buzz)検査などを高精度に実施。EQset™により、複数テストステーション間での測定結果の一貫性を保証します。
超音波応用デバイスの生産ラインテスト
- 対象: 超音波センサー、超音波スピーカー、バットディテクターなど、40kHzまでの超音波を利用するデバイス。
- 技術的活用: デバイスから放射される超音波信号の周波数特性、音圧レベル、指向性などを正確に測定し、性能基準への適合性を評価します。
狭小空間・近接音場測定
- 技術的活用: スマートフォンやウェアラブルデバイスに搭載されるマイクロスピーカ―やMEMSマイクロホンなど、小型デバイスの近接音場測定に最適。7mmという細い直径 により、デバイス近傍への設置や、音響カプラ、テスト治具内への組み込みが容易です。前面ベント設計は、このような近接測定環境下でも正確な圧力応答特性を維持するのに貢献します。
製品デザインと技術的特徴
- 高品質¼”コンデンサーカプセル: 音響測定におけるゴールドスタンダードであるコンデンサー型マイクロホンカプセルを採用。小口径ダイアフラムにより、40kHzまでの優れた高周波特性と、広いダイナミックレンジ(36dBA~138dB)、そして低歪みを実現します。
- 堅牢な構造とコスト効率: 生産ラインでの過酷な使用に耐えるステンレス製筐体を採用。同時に、EQset™テクノロジーによる個体管理コストの削減効果も含め、トータルコスト効率に優れています。
- 内蔵プリアンプとEQset™ DSP: 高品質プリアンプとEQset™ DSPをマイクロホン本体に内蔵。これにより、外部プリアンプが不要となり、システム構成を簡素化できます。
- 前面ベント方式: マイクロホン前面(ダイアフラム側)に通気孔を持つ前面ベント方式を採用。これにより、カプラ測定や圧力場校正において正確な応答特性が得られます。
- SMBコネクター: 確実な接続と容易な着脱を実現するSMBコネクターを採用。頻繁な抜き差しや振動環境下でも安定した接続を提供します。
- コンパクトサイズ: 全長65mm、直径7mmというコンパクトなサイズ により、自動化されたテストシステムや限られたスペースへの組み込みが容易です。
システム互換性と接続性
- CCP (定電流電源) 駆動: IEPE (Integrated Electronics Piezo-Electric) としても知られるCCP方式に対応。2線式(信号線とグラウンド)で電源供給と信号伝送を同軸ケーブルで行うため、配線がシンプルで、ノイズ耐性に優れ、長距離伝送(最大30mテスト済み)も可能です。多くの音響・振動用データ収集(DAQ)システムがCCP入力に対応しています。
- 外部電源モジュール/アダプター: CCP入力を持たないシステム向けに、GRAS 12ALや12BA/BE/BBといった外部CCP電源モジュールが利用可能です。また、GRAS AG0003 BNC-XLRアダプタを使用すれば、プロオーディオ機器で標準的な+48Vファンタム電源での駆動も可能です。
- TEDS (IEEE 1451.4) 対応: マイクロホン内部にモデル名、シリアル番号、感度、校正日などの情報を格納するTEDSチップを内蔵しています。TEDS対応のDAQシステムを使用すれば、マイクロホンを接続するだけでこれらの情報が自動的に読み込まれ、チャンネル設定が自動化される「プラグアンドプレイ」を実現します。これにより、設定ミスを防ぎ、セットアップ時間をさらに短縮できます。ユーザー定義データの書き込みも可能です。
- バーコード識別: 筐体にはバーコードが刻印されており、個体管理やトレーサビリティ確保に利用できます。
校正とトレーサビリティ
- 感度校正: 標準的な音響校正器(例:GRAS 42AG)やピストンホン(例:GRAS 42AP, 42AA)を用いて、250Hzまたは1kHzにおける感度校正が可能です。これは、マイクロホン単体だけでなく、ケーブルやDAQを含む測定チェーン全体の感度を確認・調整するために有効です。
- 周波数応答測定: EQset™により通常は不要ですが、研究開発用途などで詳細な周波数応答を確認したい場合、保護グリッドを取り外し、静電アクチュエーター(例:GRAS RA0014)と専用アダプター(GRAS RA0571)を用いて圧力応答周波数特性を測定することも可能です。
- EQset™による校正作業の簡略化: EQset™テクノロジーの最大の利点の一つは、個々のマイクロホンに対する周波数応答校正データシートの管理・適用が不要になる点です。全ての個体が同一のフラットな周波数応答を持つため、測定システム側での周波数補正は基本的に不要です。測定チェーン全体の感度を確認するための定期的な音響校正(感度校正)のみで、一貫性とトレーサビリティを確保した運用が可能です。
技術仕様
マイクロホンタイプ |
圧力型 (Pressure Field) |
周波数範囲 |
10 Hz ~ 25 kHz(± 0.5 dB) |
10 Hz ~ 40 kHz (± 1 dB) |
|
低域カットオフ (-3 dB) |
4 ~ 6 Hz |
ダイナミックレンジ |
36dB(A)~138dB |
感度 (250 Hz; ±0.2 dB) |
8mV/Pa |
対応CCP電流 |
4 ~ 10 mA |
TEDS |
対応 |
コネクター |
SMB |
動作温度範囲 |
10℃~ 45℃ |
最大ケーブル長 (4mA CCP時テスト済) |
30m |
重量 |
8.4g |
長さ |
65mm |
直径 |
7mm |
位相拡散 (公差) |
|
– 1 kHzまで |
±0.5° |
– 5 kHzまで |
±1° |
– 10 kHzまで |
±2° |
– 20 kHzまで |
±5° |
– 30 kHzまで |
±7° |
GRAS 40PO-L 周波数特性データ
GRAS 40PO-L ノイズフロアデータ