垂直型LEDチップ設計とは?指向性照明デバイスに優れている理由について解説
今回は、高輝度指向性照明(HLDL)の設計に欠かせない「LEDチップの構造」に関するLuminus社の技術記事をお届けします。
現在、LED市場では「フリップチップ」実装が広く普及しています。しかし、光を遠くへ鋭く届ける指向性照明の用途においては、側面からも光が広がるフリップチップは必ずしも理想的とは言えません。
そこで圧倒的な強みを発揮するのが「垂直型LEDチップ」技術です。発光面をチップ上面のみに限定することで光をギュッと凝縮し、極めて高い輝度(nit値)と中心光度を実現します。光の色ムラを防ぎつつ、レンズなどの光学系を小型化できるという、設計上の大きなメリットをもたらします。
今回は、両者の構造的な違いや、指向性照明デバイスにおいて垂直型LEDチップが圧倒的に優れている理由について、分かりやすく解説した記事をご紹介します。
垂直型LEDチップ設計とは?指向性照明デバイスに優れている理由
今日、市場で使用されている一般的なLEDチップの実装技術は「フリップチップ(Flip Chip)」実装です。これは、透明なサファイア基板が上を向く一方で、活性層(電極側)が下を向いている(フリップされている=ひっくり返されている)ためです。チップは基板(セラミックなど)に直接取り付けられます。フリップチップ方式は、従来のSMT(表面実装技術)方式と比較して、耐久性や光性能の向上、熱抵抗の低減など、いくつかの利点をもたらします。そのため、フリップチップ技術は多くのLEDメーカーや照明メーカーに広く採用されています。
しかし、高輝度指向性照明(HLDL:High-Luminance Directional Lighting)の用途においては、フリップチップは理想的とは言えません。指向性照明においては、フリップチップの代わりに「垂直型チップ(Vertical Chip)」技術が優れた性能を発揮します。フリップチップと垂直型チップ構造の重要な違いは、発光面(以下の図1で赤い線で示されているp-n接合部)にあります。フリップチップの全体的な発光面には、チップの上面と側面の両方が含まれます(図1で黄色で示されている蛍光体層)。一方、垂直型チップの発光面はチップの上面のみです。これにより、発光角がより狭くなり、光軸上の光量が増加して、高い中心光度(光軸上の強度)が得られます。
図1 – フリップチップ(Flip Chip)と垂直型チップ(Vertical Chip)のLED構造の比較。垂直型チップ構造の方が光の広がり(配光角)が相対的に狭いことを示しています。
フリップチップの側面から光が出力されると、HLDL(高輝度指向性照明)用途におけるLEDの性能が低下します。また、黄色い輪(イエローリング)を形成しやすくなるため、特に白色光デバイスにおいては光の色品質が劣化する可能性があります。
Luminusの垂直型LEDのラインアップには独自の白色蛍光体技術が用いられており、これにより配光角ごとの色ムラ(color-over-angle)に対する高い色均一性を実現し、発光面積をチップ自体と同じ小ささに保つことができます。これらの要素が、HLDLに求められる高いルーメン密度をさらに強力に後押しします。
垂直型チップは熱抵抗が低く、その垂直構造により熱をより効率的に伝達するため、放熱性が向上します。多くの標準的なフリップチップLEDは、電流が水平方向に流れるという制限があるため、高い電流密度に対応できません。しかし、垂直型チップはより高い電流強度、すなわちより高い駆動電流に耐えることが可能です。これは、LEDあたりの光束を増やし、ルーメン密度、つまり「チップ輝度(チップのnit値)」を高められることを意味します。
発光面積が小さく、ビーム角(指向角)が狭いため、使用する光学系(レンズなど)も小型化できます。また、側面(からの発光)がないため、配光角ごとの色均一性と中心光度(光軸上の強度)がさらに向上します。これらの特性はすべて、HLDLデバイスにとって理想的です。さらに、垂直型チップ構造はLEDあたりの光束が高く、ビームの色や明るさが均一であるため、1つのデバイスに必要となるLEDチップの数を減らすことも可能です。加えてLuminusは、指向性照明向けにこの製品ラインをさらに最適化するため、フラットウィンドウパッケージ、チップあたりのマルチジャンクション(多接合)、円形エミッターなど、高度なパッケージング技術とチップ技術を導入しています。
複数のp-n接合を持つ単一の垂直型チップは、ビームスポット内の暗線(ダークライン)を最小化または排除し、LEDの光を非常に狭いビーム角にコリメート(平行光化)しやすくするといった光学的利点をもたらします(以下の図2)。1つのチップに複数の接合部を持たせることで、個別のチップを使用する際に必要となる余分なワイヤー配線を省くことができます。また、マルチジャンクションチップを使用することで、デバイスをより高い電圧で駆動できるようになり、幅広い電源に適合させやすくなります。設計者は低電圧での駆動か、あるいは直列接続による高電圧での駆動かを選択できるため、マルチジャンクションチップは幅広い用途に対応できる汎用性の高い選択肢となります。例えば、Luminusの「SST-70X WxS」チップには、最大駆動電流が5.25 A(6V仕様)または2.625 A(12V仕様)の2つのバージョンが用意されています。
図2 – Luminusの「SST-70X」マルチジャンクションLED(左)と、一般的な4チップLED(右)のビーム特性の比較。
円形エミッターと垂直型設計の特長を組み合わせることで、性能に相乗効果がもたらされます(円形エミッター構造の利点については、ヘルプセンターの記事“What LED Optical Characteristics Are Best for Directional Lighting?”で解説しています)。
以下の表1は、いくつかの光学構成において、円形エミッターを用いた垂直型チップと、正方形エミッターを用いたフリップチップの性能を比較したものです。200ルーメンという同じ光束で同じ光学系(レンズなど)を使用した場合、垂直型チップ/円形エミッター(SST-12-WxH)は、より狭いビーム角、57%高い中心光度(cd)、より高いKファクター(cd/lm)、そして19メートル長い照射距離を実現します。(Kファクター(cd/lm)とは:光束(ルーメン)を中心光度(カンデラ)にどれだけ効率よく集められているかを示す指標です。この数値が高いほど、光が中心に凝縮され、遠くまで届く鋭いビームであることを意味します。)
表1 – 正方形フリップチップ(3535)と、垂直型円形エミッターチップ(SST-12-WxH)の比較
まとめとして、指向性照明における垂直型チップ技術の利点は以下の通りです。
◦高い光学効率
◦高い中心光度(光軸上の強度)
◦より狭いビーム角(指向角)
◦光学系(レンズなど)の小型化
◦必要なLED数の削減
◦ビームの色と明るさの均一性
最高のHLDL性能を実現するための照明デバイス設計とコンポーネントの最適化について、さらに詳しく知りたい方は、ホワイトペーパー” High-Luminance LEDs for Directional Lighting Applications”をぜひご覧ください。
HLDL用途に最適なLEDを選ぶためのガイダンスについては、ヘルプセンターの記事“How Do I Select the Right LED for my Directional Lighting Product?”をご覧ください。
※参考:COB(チップ・オン・ボード)技術では、ワイヤーボンディングが用いられます。電気的な接続部が基板に直接接合されるフリップチップとは対照的に、LEDチップはワイヤーによって基板と電気的に接続されます。
まとめ
垂直型LEDチップ設計、指向性照明デバイスに優れている理由とは?
高輝度指向性照明(HLDL)において、垂直型LEDチップは市場で一般的なフリップチップを凌駕する性能を発揮します。
フリップチップは側面からも発光するため光が分散し、色ムラの原因になりがちです。一方、垂直型チップは「上面のみ」から発光するため、光が中心に凝縮され、高い中心光度と狭いビーム角を実現します。
また、放熱性に優れ、より高い駆動電流に耐えられるため、圧倒的なチップ輝度(nit値)が得られます。結果として、レンズなど光学系の小型化や、デバイスに搭載するLED数の削減が可能となります。さらにマルチジャンクション技術を採用することで、色ムラのない均一なビーム品質を実現し、電源設計の自由度も高まります。
指向性照明の光学性能と設計効率を最大化する上で、垂直型LEDチップは極めて強力で理想的な選択肢となります。
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