指向性照明に最適なLEDの光学特性について解説
指向性照明(スポットライトやプロジェクター、舞台照明など)において、光を遠くまで強く、かつ均一に届けるためには、どのようなLEDを選ぶべきでしょうか?
高輝度指向性照明(HLDL)のパフォーマンスを最大限に引き出すためには、単なる明るさ(全光束)だけでなく、LEDの発光面やパッケージの形状といった「光学特性」が極めて重要になります。
今回の記事では、Luminus社が強みとする「フラットウィンドウ(ドームレス)設計」がもたらす中心光度の劇的な向上や、色度シフトの低減効果について詳しく解説しています。また、より高品質で美しい真円のビームスポットを作り出す「円形エミッター」のメリットなど、設計に欠かせないポイントをデータとともに比較・検証しています。
理想的な照射距離とビーム品質を実現するための、指向性照明に最適なLEDの光学特性について、分かりやすく解説した記事をご紹介します。
指向性照明に最適なLEDの光学特性とは?
LEDは、高輝度指向性照明(HLDL: high-luminance directional lighting)用途の要件を満たすのに非常に適しています。そのパフォーマンスを最適化するため、メーカーはLEDの形状、レンズの形状、二次光学系など、光学設計のあらゆる側面を考慮しなければなりません。
まず第一に挙げられるのが、光を平行(コリメート)にして出力パターンを制御し、光をより均一にするための「二次光学素子」の組み込みです。二次光学系には、リフレクター(反射板)、全反射(TIR)リフレクター/レンズ、各種レンズ※ など、さまざまな形態があります。さらに考慮すべき事項として、フラットオプティクス(平面光学系)の採用、チップサイズ、エミッター(発光部)の形状などが挙げられます。
フラットオプティクスの利点
フラットな光学素子を用いて設計されたLEDは、光源の光度と照射距離を向上させ、最適なHLDL(高輝度指向性照明)パフォーマンスをサポートします。そのため、フラット設計のLEDは多くの指向性照明アプリケーションに特に適しています。フラット設計とは、単純に言えば、ドーム(半球状のレンズ)の代わりにフラットな発光面(フラットウィンドウ)を使用することで、LEDチップの形状(プロファイル)が平らになっていることを意味します(下図1参照)。フラットウィンドウは、一般的なドームレンズを用いたLED設計に比べて発光面積が小さくなります。
さらにフラット設計では、レンズをLEDに極めて近い位置で配置(密着結合)できるため、光源の軸上光度(中心軸上の光の強さ)が高まります。その結果、ルーメン密度が向上し、小型の光学系でも高い光学効率が得られ、照射距離を延ばすことができます。光の到達距離(スロー:throw)に関しても、フラットウィンドウはドームウィンドウを採用したパッケージLEDよりも長距離への照射が可能です。
図1 - ドームレンズを搭載したLuminus SST-40-WxSと、フラットウィンドウを採用したLuminus SFT-40-WxSの比較(二次光学系と組み合わせた場合)。
ドーム型と比較したフラットウィンドウLED設計のもうひとつの利点は、ビーム品質において重要となる「角度による色のばらつき(色度シフト)」が低減されることです。
例えば、以下の図2は、色温度(CCT)6500K用に設計されたドーム型LED(SST-40)の角度特性を示すグラフです。実際には、0度(正面)の角度で7000Kを超えるピーク色温度に達しています。しかし、ビーム角が大きくなるにつれて色温度は4750Kまで低下し、中心から端にかけておよそ2300Kもの大きな色の差が生じています。
これを、同じく6500K用に設計されたフラットウィンドウチップ(SFT-40)の角度特性(図2)と比較してみてください。グラフが示すように、角度による特性のばらつきははるかに小さく(より均一に)なっており、5500Kから6750Kの間、つまり中心から端にかけての差はわずか1250Kにとどまっています。
また、フラットウィンドウ設計はビーム品質にも良い影響を与え、以下の図3および図4に示すように、照射スポットの均一性を向上させます。これらの比較では、ほぼ同じサイズと出力のリフレクターを使用していますが、フラットウィンドウ設計の方がより高い(中心)光度(図3ではドーム型LEDより60%高く、図4では5倍のカンデラ値)を生み出し、ビームスポット内で均一な光を保てる領域がより広くなっています。
図2 - ドームレンズLED(SST-40 6500K)とフラットウィンドウLED(SFT-40 6500K)の角度に対する色温度(CCT)の比較。フラットウィンドウ設計の方が、色の均一性に優れていることを示しています。
図3 - フラットウィンドウLED(SFT-40-W)のビームスポットは、ドーム型LED(SST-40-W)と比べて漏れ光が少なく(ハローリングが小さく)、より高品質です。これにより、スポットがより均一になるだけでなく、均一な照射領域も広くなり、1.6倍の(中心)光度(カンデラ値)が得られます。
図4 - 図3と同様に、フラットウィンドウLED(SFT-70X-W、左)のビームスポットは、ドーム型LED(SST-70X-W、右)に比べて漏れ光が少なくなっています。また、スポットサイズがより大きく、スポット全体の均一性にも優れています。
小型LEDの利点
より小型のLEDチップは、HLDL(高輝度指向性照明)用途において、より優れたパフォーマンスを発揮します。大きなLEDチップで小型LEDと同じビーム角を実現しようとすると、より大口径の二次光学系が必要になります。このことはHLDLデバイスの小型化を制限してしまうため、懐中電灯のように小型のフォームファクタ(形状・サイズ)が求められる多くのHLDL機器には適さなくなってしまいます。
一般的に、LEDは広範囲に広がる光を放つため、ビームの形状を整える二次光学系が必要になります。指向性照明においては、光学系がランバーティアン(完全拡散)に近い光を、照射距離の長い集光されたスポットライトへと変換します。
光学部品を設計する際、基本となる設計計算は通常、光を「点光源(理想的な光源)」と仮定して行われます。しかし、実際のLEDには大きさ(寸法)があるため、中心軸から外れた(軸外の)光線を制御することは難しく、結果として意図した照射エリアの外側に漏れ光が発生してしまいます。
したがって、同じ二次光学系を使用する場合、発光面積が小さいほど中心軸上の光の比率が高くなり、中心光度(CBCP:Center-Beam Candlepower)が向上するため有利になります。円形エミッター(発光部)の利点
多くのCOB(チップオンボード)LEDを除き、一般的なSMD(表面実装)LEDのほとんどは、正方形のダイ(発光素子)を採用しています。しかしHLDL(高輝度指向性照明)用途において、円形のLEDはいくつかの理由から、標準的な正方形のエミッターよりも優れたパフォーマンスと高い光品質を発揮します。
一般的なHLDL用途では円形のビームスポットが求められますが、これは通常、正方形のエミッターから発せられた光を、光学素子を介して円形のビームに変換することで作り出されています。
もしエミッター自体が円形であれば、必要な光学系(レンズなどによる光の変換処理)が少なくて済み、高品質なビームスポットをより容易に実現できます。また、円形エミッターは、より高い軸上光度(中心光度)、長い照射距離、そして高い光学効率をもたらし、これらすべてをより小型の光学系で実現することが可能です(下図5参照)。円形エミッターを使用すると、軸上光度(Kファクター※※)が30%以上高くなり、さらにビーム角をより狭く(狭角に)絞り込むことができます(表1に示す通り)。
円形エミッターを使用するもうひとつの効果は、ビームスポットの品質に表れます。正方形エミッターのビームスポット(図5、上)には、やや四角みを帯びたハロー(輪郭の漏れ光)が生じます。これに対し、円形エミッター(図5、下)は完全な円形でハローも小さくなっています。これは、光が中心のビームスポット内により多く集まっている(無駄なく照射できている)ことを意味しています。
図5 - 同じレンズを使用して正方形(上)と円形(下)の発光面(エミッター)を持つLEDを比較。円形エミッターの方が軸上光度(中心光度)が高く、照射距離が長くなり、より完全な円形のビームスポットが得られます。
表1 - 正方形の発光面と円形の発光面を持つLEDの比較。円形LEDを使用することで、Kファクターのパフォーマンスが33%向上することが示されています。
最高のHLDL(高輝度指向性照明)パフォーマンスを実現するための、照明器具の設計や部品(コンポーネント)の最適化に関する詳細については、ホワイトペーパー『High-Luminance LEDs for Directional Lighting Applications』をご覧ください。
HLDL(高輝度指向性照明)用途に最適なLEDを選ぶためのガイダンスについては、ヘルプセンターの記事『How Do I Select the Right LED for my Directional Lighting Product?』をご覧ください。
※※「Kファクター」とは?
さまざまなHLDL(高輝度指向性照明)光源のパフォーマンスを比較する際、カンデラ毎ルーメン(cd/lm)を単位とする「Kファクター」という略称(指標)を用いることができます。Kファクターは「レンズ効率係数」を指し、光源の集光度合い(光の収束性)を表すものです。集光度合いが高いほど、ビームはより狭く(狭角に)明るくなり、HLDL用途に適していることを意味します。業界によっては、これを「ピーク光度(最大光度)」と呼ぶこともあります。
注:この「Kファクター」は、光源の色(色温度)を表す際に用いられる単位「K(ケルビン、例:3000K)」とは異なりますのでご注意ください。
まとめ
指向性照明に最適なLEDの光学特性とは?
高輝度指向性照明(HLDL)の性能を最大限に引き出すためには、用途に適したLEDの光学特性を理解することが不可欠です。本記事では、特に重要な3つの要素が示されました。
第一に「フラットウィンドウ(ドームレス)設計」です。従来のドーム型レンズを持たないことで、光を極限まで中心に集め、圧倒的な中心光度と長距離照射、さらに角度による色度シフトの低減を実現します。
第二に「小型チップ」の採用により、二次光学系全体を小型化しつつ、高い中心光度(CBCP)を維持できます。
第三に「円形エミッター」です。正方形チップとは異なり、無駄な漏れ光(ハロー)を抑え、均一で美しい真円のビームスポットと高いレンズ効率(Kファクター)を生み出します。
これらの特性を備えたLEDを選択することで、よりコンパクトで、遠くまで美しく照らす理想的な照明製品の設計が可能になります。